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森林景観モデルLANDIS-IIへの倒木上更新プロセスの実装 (Hotta et al. 2021)

Highlight

  • 森林景観モデルLANDIS-IIに倒木上更新プロセスを新たに実装した

  • 改良モデルを用いて、風倒後管理が森林の種組成に及ぼす長期的影響をシミュレーションした

  • 掻き起こしを行なった場所では、100年間にわたってカンバが優占した

  • 1度目の風倒後の倒木搬出によって、2度目の風倒後のバイオマスの回復が遅くなった

  • ​倒木搬出をした場合、複数回風倒を受けた場合には倒木依存種がほとんど更新できなかった

森林内では、林冠木が枯死し林床に控えていた稚樹が成長する、といった世代交代が絶えず起こっています。この世代交代のきっかけは、寿命を迎えた成木の枯死であったり、大規模な撹乱による林冠木の枯死であったりします。森林の世代交代に関する興味深い現象の1つに「倒木上更新」があります。枯死して林床に横たわった倒木上が稚樹の更新場所となり、次世代を育成するのです。倒木上は林床に比べて、病原菌が少ない、高い位置にあることで光を得やすいなどのメリットがあります。倒木上更新のプロセスについてはこれまで野外調査に基づいて数多く研究されてきました。その中で、トウヒ属やツガ属の樹種は更新場所の大半を倒木上に依存していること(e.g. Harmon and Franklin 1989; Takahashi et al. 2000; Weaver et al. 2008)が明らかにされてきました。また、林床をササで密に覆われる東アジアの多雪地域では、倒木上はササによる被陰を回避できる場所としても機能するため、森林の更新に不可欠な存在であることがわかってきました(Hiura et al. 1996)。

 

森林景観モデルは、様々な気候や撹乱、管理シナリオの下で将来的に森林景観がどのように変貌していくかを予測することのできる有用なツールです。しかし、モデルというのは自然現象をある程度単純化している側面もあるため、重要な生態学的プロセスが表現しきれていないのが実情です(Albrich et al. 2020)。倒木上更新も、森林景観モデルで未だ再現されていなかったプロセスの1つです。

 

そこで本研究では、森林景観モデルLANDIS-IIに倒木上更新のプロセスを組み込みました。

また、ケーススタディとして、改良版のモデルを用いて風倒後の管理が将来の森林の種組成に及ぼす影響をシミュレーションしました。

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