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風倒後の倒木搬出が森林の炭素蓄積に及ぼす長期的影響の解明​ (Hotta et al. 2020​​)

Highlight

  • 風倒後の倒木搬出が森林全体の炭素蓄積に及ぼす長期的影響を解明

  • 風倒と倒木搬出から64年後には森林全体の炭素蓄積はほぼ回復していた

  • 倒木搬出で減少した枯死木炭素蓄積は、広葉樹や森林発達過程で発生した枯死木によって埋め合わされた

  • ​倒木搬出をした森林では腐朽の進んだ枯死木と堆積有機物層の炭素蓄積が少なかった

森林には大気中の二酸化炭素を貯留し気候変動を軽減する機能があります。​​しかし火災や台風といった「自然撹乱」を受けると、森林は二酸化炭素の放出源になってしまいます。さらに、自然撹乱後の「倒木搬出」は植生の回復を妨げ、森林の二酸化炭素吸収機能や炭素蓄積機能の回復を遅らせてしまいます。しかし、先行研究では撹乱から20年程度の期間でしか評価されておらず、50年以上の長期間が経過すると森林の炭素蓄積がどの程度回復しているかは未解明でした。

北海道の森林では1954年の洞爺丸台風で大規模な風倒が発生しました。そこで、北海道の東大雪地域において、洞爺丸台風での風倒地とその周辺の森林を調査し、風倒後の倒木搬出が森林全体の炭素蓄積に与える長期的影響を評価しました。

その結果、風倒から64年が経過すると、倒木搬出をした森林の炭素蓄積は倒木を残置した森林と大きな差はありませんでした。倒木搬出によって針葉樹の前生樹が破壊され、成長の早い広葉樹が多く侵入してきたことや、風倒後の森林発達過程で枯死木が多く発生したことで、倒木搬出によって減少した炭素蓄積が埋め合わされたと考えられます。一方、腐朽の進んだ枯死木と堆積有機物層(O層)の炭素蓄積は倒木を残置した森林の比べて倒木を搬出した森林で少ない状態でした。

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長期的な炭素蓄積の回復という観点では、風倒後に倒木搬出をしても大きな影響はないといえるでしょう。しかし、森林の管理方法を検討する際には生物多様性や他の生態系サービスへの影響も考慮しなければなりません。本研究では、64年経過しても倒木搬出によって腐朽の進んだ枯死木が少ないままであることがわかりました。腐朽の進んだ枯死木は様々な生物の生息場として機能します。また、北海道の森林を特徴づける針葉樹であるエゾマツは腐朽の進んだ倒木上でしか更新することができません。倒木搬出は森林の生物多様性に長期的に影響を及ぼす可能性があるでしょう。

Hotta et al. (2020) Forest Ecology and Management

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